牛は枝肉だけで500kg前後にもなる大型動物。
基本的に背骨より上の「ロース」は高級部位。
下側の「ばら」は、お手頃価格で庶民の味方。
よく動かす筋肉はかたく、動かさなかった「ヒレ」などは柔らか…と、味や食感もさまざま。
部位を知れば、料理の幅も焼肉店での楽しみも広がります。
頭に近い顎の部分。肉質のキメが粗く、かたい。こま切れやひき肉、スープの材料に。
腕を中心とした部位。ローストビーフに適した「とうがらし」も、ここに含まれてます。
適度に脂肪が入り薄切り向き。やや筋っぽい。
サーロインより大きく、柔らかく味がよい。ステーキ、しゃぶしゃぶに。
ステーキとしては最高部位。あまりの美味しさに「Sir」の称号が与えられたといいます。
サーロインの内側の細長い部分。ほとんど動かさない部位なのでキメが細かく柔らかい。
肋骨まわりのバラ肉の、頭寄りの部分。
常に動く部分なので、赤身と脂肪が層になり、繊維質でかたい。
赤身と脂肪が層をなし、「三枚肉」とも呼ばれる。焼肉のカルビは、おおむねこの部分。
ももの内側にある赤身の大きなかたまり。牛肉の中でもっとも脂肪が少ない。煮込み料理に。
うちももの下位にある球状をした赤身のかたまり。
ももの外側の部分。キメが粗くややかたい。ポトフやシチューなど煮込み料理に。
コンビーフの材料にも。
サーロインに続く腰の部分。やわらかい赤身肉で味に深みがある。ステーキとして。
筋が多くかたいが、コラーゲンも豊富で加熱するとゼラチンに。ブイヨンや煮込み料理に。
タン(舌)、ハラミ(横隔膜の腹側部分)、レバー(肝臓)、ハツ(心臓)、小腸(ヒモ)、
大腸(シマチョウ)、ギアラ(第四胃。アカセンマイとも呼ぶ)などがある。
近年、肉牛の改良や肥育の方向性が「サシ」を入れることだけでなく、
美味しさを意識した生産へと変化してきています。
そこで、牛肉の美味しさの指標のひとつとして注目されたのが「オレイン酸」。
長野県でも、オレイン酸含有量が基準値以上の場合は「信州プレミアム牛肉」の認定がされています。
ただ、肉本来の美味しさは肉質、脂質、香り、食感など色々な要素を含めて考えなければいけないのでオレイン酸の数値だけでは、本当に美味しい牛肉だけを選ぶことはできません。
生産者の方々もまだ今のところ、サシを入れなければ高値にならないので牛肉が霜降り重視の方向になりすぎています。
昔は、但馬系の血統の強い牛が多かったので、牛が小さく霜降りで、美味しくない牛はほとんど無かったのですが、一昔前より、鹿児島から出てきた、牛が大きくても霜降りになる血統(気高系)が多くなり、霜降りでも脂の味がしつこくて美味しくない牛が増えました。
同じ血統であれば、オレイン酸の数値が高い方が美味しいのですが、気高系の牛のなかにもオレイン酸の数値が高くなるタイプの牛が含まれるので、オレイン酸は血統や脂肪の融点などと組み合わせて考えた方が良いと私は思います。
そしてやっぱり、但馬系の血統の強い健康で良い牛を、信頼できる生産者の方が育てたか否か、それを1番の判断材料にするのが良いと思います。
これがオレイン酸の数値を計る計測器です。
長野県中野市にある 大信畜産の冷蔵庫の中で 肉質とオレイン酸数値を 確認中の店長。
買物をしたお肉の流通経路は、2001年に発生したBSE(牛海綿状脳症)問題を起点に、
牛肉は法律によって1頭ごと違う個体識別番号をつけられ、
小売店頭で表示することが義務付けられてます。
PCや携帯電話で、この個体識別番号を検索するサービスがあるのですが、出生の年月日、雄雌(去勢)の別、母牛の個体識別番号、品種、出生地、育成地、肥育地、と畜された場所、検査を受けた場所が一発でわかります。
中には生産者の名前や牧場名が明記されているのもあって、
思わず「今日食べたヒレ肉は最高だったよ!」なーんて、生産者にメッセージを
送りたくなっちゃうことも。
実際、この画面から直接送れないのが残念だが、どんどん活用してみてください。
PC版→www.id.nlbc.go.jp
携帯版→www.id.nlbc.go.jp/report_mcap/proxy/cf/mobile/
牛枝肉(※1)の格付けを「ランク」と呼びます。
歩留等級ABCと肉質等級54321(1〜12)の組み合わせで決まり、全部で36段階あります。
A5-12が36段階中の最上級ランクとなります。
(歩留等級とは、枝肉から骨、余分な脂肪を取り除いてどのくらいの部分肉が取れるかによりABCランク付します。肉質等級とは、サシの入り具合を5等級にわけ、12に分けられる脂肪交雑B.M.S.と、肉の色沢、肉の締まり及びキメ、脂肪の色沢と質により1~5までのランクを付けます)
※1 「牛枝肉」とは、頭部•内臓や四肢の先端を取り除いた部分の骨付きの肉。
今までの当店預託牛を、BMSの高い順に並べて見ました。
A-5(BMS12)北平安ー第1花国ー紋次郎
A-5(BMS11) 美津照重ー藤平茂ー安福165の9
A-5(BMS10) 美津照重ー福桜ー福茂
A-5(BMS9) 北平安ー21世紀ー安福165の9
A-5(BMS8) 北平安ー福乃国ー平茂勝
A-4(BMS7) 菊福秀ー平茂勝ー紋次郎
A-4(BMS6) 安糸福ー第1花国ー北国7の8
A-4(BMS5)奥安福ー平茂勝ー安平
A-3(BMS4)菊花国ー安糸福ー紋次郎
格付けとBMSについての説明をしましたがA-5 BMS12だから必ず美味しくてA-3だから美味しく無い、ということは、有りません。
当店のA-5BMS12の牛肉も、『最高に美味しかった』という方が大半でしたが『サシが入り過ぎていて美味しくなかった』という方もいました。
またBMS7の牛肉は、格付けがA-4でも皆様『美味しかった』と言って頂きました。一昔前より、確実にお客様の霜降り離れが進んでいます。
それと、共進会などの上位でBMS10〜12ぐらいのランクの枝肉に、血統が悪くて美味しく無い牛が増えました。
(血統の組み合わせにより、かなりの確率でサシだけを入れることが可能になりました。)
お客様の赤身嗜好が進んだこともあり、当店では、数年前より共進会上位の賞の付いた枝肉を買うのをやめました。
格付けだけではなく、味、小ザシ、脂質、血統などを組み合わせた新しい評価基準とそれに合わせた
新しい流通方法と販売の仕方が求められいます。
日本で流通している牛肉の中でも、誰もが知っているブランド牛というものがあります。
ブランド牛は銘柄牛とも呼びますが、その数はなんと229銘柄!(2010年1月現在)
その銘柄牛達の共通するイメージは「霜降りいっぱいで値段も高い」。
そんな銘柄牛の中で、店主が個人的にランク付してみた場合の表が下記のものです。
次に和牛や国産牛などという呼称がありますが、「和牛」=「国産牛」ではありません。
「和牛」とは牛の品種の表示。「国産牛」とは、日本国内で飼育された牛のことをいいます。
牛肉の表示は大別すると下表のように和牛、国産牛及び外国産牛の3種類があります。
牛肉の美味しさを左右するものは主に3つあり、
(1)血統
(2)性別
(3)餌(飼料)
によって、ほぼ決まり
最後に生産者の肥育技術により、資質が100%引き出されたり半減したりします。
個人的にランク付けして見ましたが、今はどの有名ブランドにも本当に美味しい牛を育てられている方となんちゃってブランド牛の方が居るので(子牛市場に行って買う牛の血統を見ると良く分かります)本当は個人的ランク付けは、あまり意味がありません。
また無名のブランド牛の中にも美味しい牛を育てている方も数多くいるので、肉屋が本当に美味しい牛肉を見極める技術が必要です。